2022年5月27日に「20歳のソウル」という、高校の応援曲にまつわるストーリーを描いた映画が公開されました。
この映画は実話であり、千葉県船橋市立船橋高校(以下、市船)のオリジナル応援曲「市船soul」を題材としています。
市船(いちふな)といえばサッカー部や男子バスケットボール部などが全国常連校であり、スポーツが強いことでも有名です。
特にサッカー部は高校サッカー選手権での優勝回数が5回と歴代2位(1位は国見と帝京の6回)で、全国屈指の強豪校でもあります。
そんな市船で生まれ、今や学校を代表するオリジナル応援曲となっている「市船soul」。
サッカー部や野球部、バレーボール部などが試合の得点チャンスの際に、チャンステーマとして使用しています。
学校オリジナルの応援曲には、今回の映画でも公開されているようなストーリーが多くあり、多くの人を感動させます。
市船soulが映画として取り上げられたことで、『どんなオリジナル曲が、他の学校にはあるのだろう?』と思った方も、いるのではないでしょうか?
そこで今回は、高校の試合で使われている、いろいろな学校のオリジナル応援曲をまとめました。
なお、今回の記事内でのオリジナル応援曲は、原曲をアレンジして使い始めたものは除き、完全にその学校が発祥の曲のみを紹介します。
目次
《市船soul》市立船橋高校
まず紹介するのは冒頭でも紹介し、映画でも上映された市船の「市船soul」。
作曲したのは当時、市船吹奏楽部に所属する「浅野大義さん」です。
高校生が作曲したというのが本当に凄いですね!母校への愛が溢れているのが伺えます。
少し映画のネタバレをしてしまいますが、映画の主人公でもある浅野さんは2017年1月、20歳というあまりにも若い年齢でこの世を去りました。
癌によって亡くなった浅野さんの告別式には164人の吹奏楽部員が集まり、そこで市船soulが奏でられたそうです。
「俺の心は死んでも、俺の音楽は生き続ける」
そんな浅野さんの魂がこもった市船soulは、サッカー部や野球部の応援でしっかりと受け継がれています。
また、高校野球の選手権大会は夏、高校サッカーの選手権大会は冬に行われることもあり、チアガールの衣装が異なります。
それぞれ雰囲気の違う応援姿を楽しむことができます。
市船の魂が込められた応援曲である「市船soul」。
間違いなく試合を熱くさせてくれる一曲ですね。
《チャンス紅陵》拓大紅陵高校
甲子園での優勝経験もある千葉県の強豪・拓大紅陵高校のオリジナル応援曲が「チャンス紅陵」です。
チャンス紅陵は、拓大紅陵で30年以上教師を勤める吹奏楽顧問の「吹田 正人さん」によって作曲されました。
拓大紅陵の応援曲は、ほとんどの曲が吹田さんによって作曲されたオリジナル曲とのこと。
毎年1曲オリジナル曲を作って応援に追加しているそうで、合計でなんと30曲以上のオリジナル応援曲が作られたそうです。
2022年、今年はどんなオリジナル曲が新たに加わるのでしょうか?
拓大紅陵の野球と共に、応援も楽しみで仕方がありませんね。
《レッツゴー 習志野》習志野高校
「美爆音」という表現でお馴染みの、習志野高校吹奏楽部の応援。
高校野球ファンの中では習志野高校の応援の迫力はあまりにも有名で、応援を聞くために野球を観に行く方もいるそうです。
習志野高校は様々な応援曲を使っていますが、中でも特に迫力があるのが、オリジナル曲である「レッツゴー 習志野」ではないでしょうか。
バッターボックスに立つ際にこの曲に後押しされたら、『今から攻撃するぞ』という気持ちがより一層高まりそうですね。
筆者の個人的な思いですが、一度で良いからこの応援に後押しされてバッターボックスに立ってみたいです!
習志野高校の吹奏楽部は全国屈指の強豪で、毎年のように全国コンクールで金賞、または銀賞を獲得しています。
近年では、プロ野球・千葉ロッテマリーンズの試合や高校日本代表(侍ジャパンU-18)の壮行試合でも習志野高校が応援をしたりなど、同校以外のチーム応援でも活躍の場がありました。
ちなみに習志野高校吹奏楽部の演奏はDVDにもなっており、習志野市役所で1枚1,500円で販売しているそうです。
また、2022年現在は無くなってしまったのかもしれないですが、以前はこのDVDが習志野市のふるさと納税返礼品にもなっていました。
市船、拓大紅陵、習志野と千葉県の高校が3校続きました。
野球部も強豪揃いの千葉県ですが、オリジナル曲を揃えてくる吹奏楽部も非常にレベルが高く、球場を盛り上げています。
《浦学サンバ》浦和学院高校
埼玉県の高校野球をリードする存在である、浦和学院高校。
2022年春には甲子園でベスト4まで勝ち進んだ、全国でもトップクラスの強豪校です。
浦和学院の応援の特徴は、オリジナル曲の多さと流れるような曲の使い方をすることです。
一般的な野球応援では、選手個人の応援曲が決まっており、一人ひとりの打席が終わったタイミングで応援曲も一旦流れが止まってしまいます。
一方、浦和学院は選手個々で応援曲を決めているわけではなく、イニングの終わりまで曲が途切れることなく流れ続けます。
ちなみに、浦和学院同様に曲が途切れないスタイルで応援している学校は、早稲田実業や三重高校などがあります。
浦和学院の応援で特に有名な曲が、「浦学サンバ」ではないでしょうか。
南米の軽快なサンバのリズムに合わせ、明るくて楽しい、攻撃を盛り上げる曲調になっています。
浦学サンバができた背景は、硬式野球部前監督の森士(おさむ)さんが、作曲を依頼したことがキッカケだそうです。
《Come on!!》日本大学第三高校
「Come on!!」は、日本大学第三高校(以下、日大三高)のチャンスマーチとして流れる曲です。
この曲は、同校吹奏楽部OBでNHK交響楽団の打楽器奏者・竹島悟史さんが作曲し、母校に無料で提供しました。
2009年の甲子園以降、日大三高のチャンステーマとして使われるようになりました。
明るくテンポの良い曲調で、チャンスをより一層盛り上げてくれる曲ですね。
この曲は甲子園を見渡すと、日大三高以外も応援曲として取り入れている学校があります。
同校側からは、他校の使用には「大変光栄なこと」とコメントしており、特に使用を断っている様子はなさそうです。
《You are スラッガー》大阪桐蔭高校
ラスボス感がハンパない曲である『You are スラッガー』は、「甲子園常連校」という表現を超え、「甲子園優勝常連校」とまで呼ばれるようになった大阪桐蔭高校のオリジナル曲です。
この曲が誕生したのは、2012年のこと。
大阪桐蔭高校・吹奏楽部総監督の梅田隆司さんが作曲家の杉本幸一に依頼し、完成したそうです。
「You are スラッガー」という曲名ですが、曲を受け取った後に梅田さんが正式に名付けました。
提供前の杉本さんの原譜には『Chance Fanfare 阪奈』と書かれていたそうです。
阪奈とは、奈良県と大阪桐蔭高校がある大東市を結ぶ道路で、野球部はグラウンドへ向かう際、この阪奈道路を通ります。
これらの背景から、大阪桐蔭のために作られた曲ということが伺えますね。
You are スラッガーの曲を使用していた野球部の選手を紹介すると、
・中村誠選手 (2014年夏 優勝時の主将、1番打者)
・藤原恭大選手(2017年春 優勝時の1番打者、2018年 春夏連覇の4番打者)
この2人の印象は特に強いです。
特にラスボス感が際立った場面は、
中村選手は2014年夏、決勝の三重高校戦で逆転タイムリーを打ったシーン。
藤原選手は2018年春の準決勝、これまた三重高校戦での延長12回裏、サヨナラのタイムリーヒットを打ったシーン。
共に試合を決定付ける場面でしっかり結果を出し、チームに勝利をもたらしました。
対戦相手の三重高校からすると、最後の最後に主将と4番が立ちはだかり、あと一歩のところで屈した試合でした。
まさに、ラスボスという感じでしたね!
You are スラッガーの曲ですが、吹奏楽部総監督の梅田さんは「多くの学校が演奏してくれるのは嬉しいこと」とコメントしており、特に他校が演奏することを断ってはいないそう。
ちなみに、大阪桐蔭高校の吹奏楽部は全国大会で金賞を受賞するなど、野球部同様に全国屈指の強豪校です。
《怪しいボレロ》龍谷大平安高校
「怪しいボレロ」は、京都の野球名門校・龍谷大平安高校のチャンステーマです。
ただ、曲名は正式名称なのかは定かではなく、「怪しい感じ」「バレエ音楽のボレロに曲調が似ている」ということから、「怪しいボレロ」と呼ばれるようになりました。
守っているチーム側からすると、失点ピンチの嫌な雰囲気の場面でこの曲を流されたら、本当に何か起こってしまうような、余計に嫌な気持ちになってしまいそうですね。
龍谷大平安高校は2019年春、同校の甲子園通算100勝を達成しました。
この試合は三重県・津田学園高校と対戦しており、延長11回に得点し、2-0で勝利しています。
その得点チャンスで流れていた応援曲は、もちろん怪しいボレロでした。
ちなみに、怪しいボレロは龍谷大平安高校側からすると、他校に使用されることをやや懸念している様子が伺えます。
オリジナリティを守りたいというスタンスで、他校で同曲を使用している場合、野球部から使用を避けて頂くように申し入れをしているそうです。
また、このような理由から、CD化についても全て断っているとのことでした。
高校オリジナル応援曲も楽しんでスポーツを観戦しよう
色々な高校のオリジナル応援曲を紹介しました。
映画化された曲の「市船soul」はもちろんですが、それぞれの曲に想いやストーリーがあることを知り、これまでとはまた違う感じ方をされた方も多いのではないでしょうか。
同じ学校で過ごす仲間を純粋な気持ちで応援するのは、とても素敵なことですね。
さらに学校オリジナルの応援曲があるというのは、一生の思い出にもなると思います。
高校の試合観戦をされる際は、試合をより熱くさせる学校オリジナル応援曲も楽しみながら、観戦をされてみてはいかがでしょうか?
なお、吹奏楽部の方で他校のオリジナル応援曲を使用したい場合、原曲の学校に極力許可を得てから演奏することをおすすめします。